王国物語とサイドストーリー
ペッキーの話
トロピカル王国には、ペッカーが住んでいます。
このお話は、ペッカーのお父さんのおじいさんの
そのまたひいおじいさんのもっともっーと昔のお話です。
トロピカル王国には、五色の羽をもった鳥達がいました。
その中に「ペッキー」という鳥がいました。
ペッキーは、仲間の鳥達に比べ、飛ぶスピードは遅く、
ご飯を食べるのもいつも最後、朝が苦手で、お昼寝が大好きな鳥でした。
そんなペッキーなので、仲間達からは、いつも冷やかされます。
そんなペッキーの一番のお友達は、生命の木でした。
毎日のように今日あった事や困った事や冷やかされた事など話します。
生命の木は、いつもペッキーの話を聞き、励ましています。
ペッキーは、そんな生命の木をまるでお父さんやお母さんのように思っていました。
ある日、
トロピカル王国で大きな戦いがおこりました。
戦いは日に日に激しさを増していきます。
美味しいフルーツやみんなの笑顔はどんどんなくなりました。
ペッキーは、生命の木に尋ねました。
「いったい、いつこの戦いは終わるのかな?
戦いは、どんどんここに近づいているよ。
僕は空に飛んで逃げる事ができるけど、
生命の木は動くことができないよ、いったいどうすればいいの?」
生命の木は、答えました。
「大丈夫・・・、心配は、いらないよ・・・」
二人の心配はよそに、
戦いはさらに激しさを増し、とうとう生命の木の近くまでやってきました。
「僕が、きっと守るから」
ペッキーは、生命の木の前に立ちました。
「ペッキー、ありがとう、
君は、自分自身の事を弱虫だとか、自信がないからと言うけれど、
私は知っています、
君の心の奥深くにある強さを、優しさを・・・、
大丈夫、心配はいらないよ、
ペッキーを、トロピカル王国のみんなを、守るからね・・・」
そう言うと、生命の木は魔法を使いました。
今までに見た事もない、感じたことがない大きな、
いや、偉大という言葉でしか表現できないフルーツ魔法です。
トロピカル王国はまばゆい光に包まれました。
戦いは、終わりました。
ペッキーは、いそいで生命の木に話しかけてみました。
生命の木は、一言も話しません。
全ての力を使い果たしたのです。
ペッキーは、王様に聴いてみました。
「王様、生命の木を助けるには、
もう一度よみがえらせる為には、どうすればいいのですか?」
王様は、答えました。
「トロピカル王国は、生命の木に助けられた、
私も生命の木を助けてあげたいのじゃ。
しかし、王国のフルーツ達は、枯れてしまった。
そして、王国の大地は、腐れの魔法で、
二度とフルーツが実らない大地になってしまった。
生命の木を復活させるには、フルーツが実る大地を取り戻す事・・・、
すなわち、フルーツの復活が必要なのじゃ。
今、選ぶことができる道は、二つ・・・。」
「一つは、
この大地を諦め、他の大地にトロピカル王国を再建する事。
もしかすると、時間が立てば腐れの魔法の効力が消え、
生命の木があるこの大地に戻ってくることができるかもしれない」
「それからもう一つ、
もう一度、フルーツが実る大地をよみがえらす事じゃ。
その為には、
腐れの魔法に対抗する魔法、
『フルーツ魔法』をもう一度この大地で復活させなければならない。
そのフルーツ魔法を発動させるには、
十九種類のフルーツを再びこの大地で実らせ事が必要じゃ。
世界各地にあるフルーツから、種と力を分けてもらい、
王国の大地で少しずつフルーツの木を育てるしかない。
実は・・・、
もうすでに王国に住む鳥達にその事を伝え、
種を見つけ運ぶことをお願いしているのじゃ。
しかし、遠く離れた見知らぬ土地から、まだ誰も帰って来た者はいないのじゃ」
王宮から帰ったペッキーは、何も言わない生命の木に話しかけました。
「覚えていますか・・・、
あなたと初めて話したのは、まだ僕が小さくて、一人ぼっちの頃でした。
飛ぶのがへたくそで、歩いて帰る僕に飛び方を優しく教えてくれました。
それから、
種をまくことがうまくできなくて困っている時も励ましてくれました。
朝寝坊をしていないか心配してくれて、
僕が悪いのにケンカして、でも、すぐ仲直りして・・・、
いつも一人ぼっちの僕の側にいてくれました・・・。
そうそう、
他の鳥達がフルーツの種を探しに行っているようですが、
まだ見つけられないようです。
王様は・・・、この土地を離れ・・・、
未来に託すことも話をしていたけど・・・」
「・・・ぼくは・・・」
生命の木を見上げたペッキーは、最後に一言残し、飛び立ちました。
「・・・・・ぼく・・・・・が・・・・」
時がたちました。
王様や国民達は、毎日あきらめず腐れの魔法で汚れた大地を耕しています。
今日も朝からとてもよい天気。
「さあ、今日もたくさん大地を耕すぞ」
王様は、元気よく門を出ました。
ふと見ると、
門の前に、小さな袋が置かれています。
王様は、その袋を開けてみました。
「こっ、これは・・・、
フ、フルーツの種・・・、いったい誰が・・・」
驚いた王様は、フルーツの種を抱え、
いそいで畑に集まった国民達の所に行きました。
「いったい誰がこの種を・・・」
皆に尋ねてみましたが、誰も持ってきた者を見ていません。
「王様、大変です!」
国民の一人が王様の前に走ってきました。
「せ、生命の木の側に・・・」
王様が、生命の木に向かうと、
なんと、ペッキーが生命の木に寄り添うように倒れていました。
フルーツ魔法を復活させる為に、生命の木を助ける為に、
人知れず旅立ったペッキーが、種を集め、王国に戻ったのです。
国民の一人が言いました。
「いつも静かだったペッキーが、
誰も集める事ができなかったフルーツの種を集めた。
なんと、強い心を持っていたのだろう」
王様は、静かに言いました。
「いや・・・、ペッキーは、何も変わってはおらんよ。
飛ぶことや種をまくのが苦手で、朝寝坊で、
生命の木が大好きで、王国が大好きで・・・、
あの日を、
皆が幸せに暮らしていたあの日を取り戻したいだけの
素直なままのペッキーだから、誰も集められなかった種を集めたのじゃよ、
生命の木は知っていたのじゃ、その強さを・・、優しさを・・・」
ペッキーの羽はたくましく、そして、たくさん傷ついていました、
しかし、その顔は、静かな、安心したような笑顔を浮かべていました。
新たな希望に満ちた種まきの季節を迎えました。
王様達は、ペッキーが持ち帰った種を大事にまきました。
小さな芽が生え、やがて立派なフルーツの木になり、
美味しいフルーツが実りました。
フルーツ魔法を復活させた王国は、少しずつ元の豊かな国に戻っていきました。
バードヤードには、トロピカル王国を救ったペッキーを讃える為、
大きな銅像がおかれました。
そして、ペッキーが運んでくれた残りの種を、
それぞれのフルーツ魔法の台座にそなえました。
さて、今年も王国に種をまく大切な時期がやってきました。
五色の羽をもった鳥達は、空から種をまいています。
その種が風に乗り、生命の木に降りかかりました。
なんと、
生命の木にたくさんの種類のフルーツが実りました。
それからというもの国民からは、
「全てのフルーツがなる木」と呼ばれるようになりました。
王様は、生命の木の一部から黄金のパイナップルを作りました。
トロピカル王国の愛の象徴として、感謝の言葉と愛を毎日捧げています。
それから・・・、
王様は知っています、
まだ誰にも話していない黄金のパイナップルと
全てのフルーツがなる木とフルーツ魔法の秘密を・・・。
そして、きっといつかまたペッキーに会える事を・・・。